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「一体どうしたというのだ。」
私にとっては、三十八度から四十度ぐらいが最も快適な入浴であることを確認したが、冬は湯上りの寒さに抗する必要があるので、多少汗ばむのを我慢して、四十一二度の温泉の湯につかる。伊東市でこれ以上チッポケな湯殿はなかろうと思われるぐらい、洗い場もないほどのところだが、私にはこれ以上の広さも必要ではない。ただ釜たきをする人たちが気の毒であった。
「ふむ、さうすると――」
見たことのない顔だつた。患者なら玄関から来る筈だ。
と後を追ふと、徳次は
「挨拶みたやうなことはもうしたかの」
「それでは」
「さうです、小倉組の方ですな」
「さうですか、さうですか。それは、いや、ごていねいなことで」
「どういふことです、わたしにはさつぱり――」
だが、時には彼等の間にも、まるで一日中陽に温められて色づいた麦畑からそのまゝ入つて来たやうな男もあるのだつた。肥つて日焼けがして彼は自分から病気を診みてもらひに来たくせに、房一の呉れる薬を不審さうに眺めて、そんな病気のあることを信じないかのやうに頭を傾かしげて、それから大声で(それは麦畑の穂の列を吹き抜けて行く、乾いた快い風のやうな響きを帯びていた)彼の持牛についた虱しらみをとる薬はやはり人間にも同じ効きき目めがあるのかね、と訊いたりするのであつた。
「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」
練吉は眠気から覚めたやうに、
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