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    「だいぶ、様子が変りましたな」

    と、練吉が引つたくるやうにとつてしまつた。

    だが、今、房一は向ふから彼を認め、挨拶しようとしているのだつた。徳次は瞬間眼をそむけたが、又慌ててふり向いた。そして、その時川向ふでは房一が急いで自転車から降り立ち、口に手をあてて呼ぶのを見た。瀬音のために何だかよく聞えなかつた。だが、その姿は紛れもない房一、今までもう身分がちがふのだから仕方がないと半ばあきらめながら半ば怒りを感じていた一方、どこかに忘れられず残つていた幼友達の温味、――まさにそれだつた。

    「なにぶん山の中でございますから、折々にこんなことがございます。」

    「ですが、一体財産譲渡つて云ふのはいつのことなんです、大分前ぢやないですか」

    「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。

    「どういたしまして。お茶位さし上げんと」

    徳次は房一から聞かれるまゝに子供の数を答へたり、それから又思ひついて水神淵へ出る近路のことを念入りに教へたりした。無我夢中に近い気持だつた。だが、その間にも彼はあの眩しげな目つきで、時々房一を眺めた。するうち彼には、自分にとつてはたゞ漠然と雲をつかむやうにしか思へない「年月」が房一の中にはつきり現れているのを感じた。それは医師高間房一だつた。この何かしら驚くべき変化の中には、徳次すら一役買つているやうに思はれた。

    「もうそんなにおよろしいんですの?すつかり御無沙汰していました。ほんとうに!よくおいでになれましたわねえ」

    「何を云うとる。すまじきものは宮仕へ、といふぢやないか」

    「今、あんたの便をしらべてみたがね」

    「はい、あの、切れて居りますが」

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