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それは一尺近い美事な鮒だつた。だが、三匹きりなかつた。いかにも少いと徳次は路々思つて来た。さう思ふと、この鮒が本当よりもずつとちつぽけにさへ見えて来たのである。
「いや、そんなこたあ、――そんなこたあしませんよ」
「うん、うん。あ、さうだ、顔を一寸洗はなくちや」
「さうですか。それは――」
「や、さあお上り下さい。さあ――」
「本日は、私ごとき者までお招きに預りまして」
「どうだ。起きられるか」
――「それに、おれは今まで散々したい放題のことはして来た。そろそろ、親の云ふことは聞いてもいゝ頃だ」
盛子は時々半ば無意識に呟いた。
と、彼は恐しく手まどつて答へた。
徳次は急に目くばせをした。
「どうもおれは、身近かな者だと平気で診られないんだね」
「お粗末ではござりまするが、どうぞごゆるりと」
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