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    小谷は相手にされなかつたやうに感じてちよつと顔をしかめた。が、しばらくすると又声をかけた。

    徳次は口のあたりをもごもごさせた。

    と、腰をたゝいてみせた。そこにはまだ一足、紙衣の下からはみ出すやうに、ぶら下つていた。

    練吉は一人で感心し、それでも足りないと見えて、房一に呼びかけた。

    その直造の耳には、次のやうな言葉が響いて来た。

    坐りなり、あたりを見まはした。眉の強い、眼の切れ目な、短いつまみ立てたやうな鼻髭を生やした今泉の稍冷い顔つきは、それだけで云ふなら確かに整つた立派な顔だつた。苦味走にがみばしつて男らしかつた。たゞ何か大切なものが欠けていた。彼は身近かに、皆から稍やゝはなれて手持無沙汰にぽつねんと坐つている房一を見つけた。

    「徳さんが新しいのを掛けてくれるまで待つていた方がいいかもしれませんね、これは」

    「やあ、しばらくで」

    「これはどこに置きますかね、この漬物桶は。――はい、はい。どつこいしよ、と」

    「いや、そのうち。――ぜひ御相談があるんですが。――そのうち、一度来ていたゞいて。いや、私の方から出かけませう。や、又――」

    「うちへもかね」と訊いて置きながら、その自家うちへ寄つて行けとも云はない。房一はふと庄谷の眼尻が人並より下つて、そこが特長のある皺になつているのを認めた。その皺の奥から時々庄谷の眼がこちらの顔を撫でるやうに見ていた。さつきから何度も微笑したやうに見えたのは、この皺のせいかもしれない。

    「さあ、知らん」

    今頃になつて、男はさう訊き、盛子がそれに答へる前に、ひとりでうなづいていた。

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