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房一の魚籠びくをのぞいて、盛子はびつくりしたやうに叫んだ。
「うん、あの程度だと別に影響はないんだらう」
「今日からお隣へ参りましたから、よろしく願います。」
房一はすぐと、大石練吉のことを思ひ浮かべた。大事をとるといふ名目で、彼の対診を求めることにしたのである。
対診に来てくれた練吉のことを気にかけているのだつた。
「えらい昔話が又ぶり返したんだな」
と、房一が台所に声をかけた。
「さうです、小倉組の方ですな」
盛子は房一からさういふことを聞かされていたので、往診に出掛ける時には彼女の方から念を押したほどだつた。房一は四時までには帰ると答へた。だが、もう五時過ぎだつた。そして、日が落ちてからの空気は、まるでわざと盛子の気を落ちつかせまいとするかのやうにどんどん暗くなり、冷えて行つた。
きよろりとした眼でしきりと家の中をのぞきこみながら、しばらくして
「なんだね、クレーの射撃なんてものは昔はなかつたもんだが、こなひだの競馬は僕も見たけれども、子供の時以来十何年ぶりのわけだが、あれはちつとも変つていないね。優勝の景品が米俵だなんてね」
「半之丞の子は?」
と、房一はそれまで彼のわきにおとなしく坐りこんでいた犬に声をかけた。川を渡る間中、落ちつかない様子で、普通に地面に坐るのとはちがふ感じにぺつたり船底に腰をつけて時々中空に鼻を上げて、何かの匂を嗅いでいた犬は、房一が自転車を持ち上げるのと同時に、足の下からさつと河原にとび降りて、そこら中を駆けまはつた。
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