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    と、その小柄な身体から出るとはとても思へない、幅のある、濁だみ声で云つた。

    盛子は急に思ひ出して不服さうな声を出した。だが、それは房一に向つて甘えながら不服を云つているやうな調子を含んでいた。

    「私も眠れなくて夜中に一度湯へはいるのですが、なんだか気味が悪るござんしてね。隣の湯へ溪から何かがはいって来るような気がして――」

    「おぢいさん、そんなに立つてばかりいないで腰をかけなさいよ」

    「ふむ」

    二人はなほ専門的なことを二三話し合つた。それから、どちらからともなく自転車に乗つた。ペタルに足をかけるときに、突然、練吉は心に浮かんだことを押へかねて、叫んだ。

    「ほう、この家鴨あひるの嘴みたやうな金具は、こりや何かな。ほう、こりやよく光る小刀だな。こんなに何本も何に使ふのかな」

    練吉はふつと思ひ出し笑ひをした。それは微笑と云ふよりは、気の好い、何だかすべつこい、いくらか相手を軽蔑したやうな表情だつた。

    「どうもこれぢや――」

    と、大声で訊いた。

    「小倉組の連中が来たちふぢやないかね。ほんとうかね」

    「すまんでしたな、長話をして」

    「その姿は見えないのですが……。」

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