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    「あゝ、お医者?」

    練吉はそこで房一について廻つたばかりでなく、角屋までもくつついて来た。そして、同じやうについて来かけた徳次を見ると、

    「や、ありがたう」

    練吉の切れの長い目は片時もぱちぱちをやめなかつた。その度に、せきこむやうなどこか菓子をせがむときに子供の駄々をこねるのを思はせる調子の声が、もつれ気味につづいて出た。その青いと云ふよりは冷たさを感じさせる色白な額には、やはり上気したやうな紅味が浮んでいた。

    「お噂はうけたまはつています」

    「ねえ!」

    「いや、それあ貰つたのが分家だから、相手はやつぱり分家の喜作さんさね」

    「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。

    それは初めて口に出す言葉だつた。

    房一はきつぱり云つた。男は、これは話が判る、といふやうな顔をした。それに押つかぶせるやうに、

    と、新聞紙から眼をはなした練吉は、一寸正文の邪魔になりさうな足をひつこめただけで、別に行儀のわるい姿をなほさうともせずに、又新聞を持ち上げながら、

    二人は自転車をひきずつたまゝ近よつた。

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