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    「うん。青島陥落の、ほら、旅団長閣下だよ」

    「ひどい傷だねえ!」

    「もう着てみましたか」

    「やあ。――こちらへ」

    その直造の耳には、次のやうな言葉が響いて来た。

    家の内部でも、房一はしよつちゆう歩きまはつて何度も道具を置き換へていた。古風な玄関の広間はそつくり待合室になつた。つゞく二室は板敷にして薬局と診察室ができ上つた。壁ぎはに立てた大きな薬戸棚、油布張りの固い患者用の寝椅子、青いビロードのふつくり盛り上つた廻転椅子、縁枠を白く塗つた医療器具棚の中には真新しいメスや鋏、鉗子かんしなどがぴかぴか光つて、大事さうに並べてあつた。

    人に話しかけるときにも半分はきまつて独り言のやうになつてしまふ義母はどうもつれ合ひの道平の癖が丸うつりになつたものらしい。だが、道平の声音こわねはあまり響かないぽつりぽつり石ころを並べるやうな調子だつたのにひきかへ、この義母のは突拍子もなく起つて又駆足で空の向ふに消えてゆくやうな大声だつた。

    「おーい。渡つてもいゝかね」

    「やあ。先日はどうも」

    「あれですかね、やつぱり自分で歩かなくちやいけませんかね」

    と、おづおづ答へた。

    「すまんでしたな、長話をして」

    喜作は、

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