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「なあ、ジョン!」
「何かの、いつたいあの山を掘つても引合ふのかな」
「どうもおれは、身近かな者だと平気で診られないんだね」
が、一方盛子もまさに自分の幼時を知つていると云ふ見知らぬ人から声をかけられた時のやうに、目をぱちくりさせ、好意のまじつた当惑と云つたものを感じていた。
それは背広姿に、遠目にもはつきりと判る緑色のソフトをかぶつた男であつた。
房一はあれから相沢の息子を診みに五六度行つた。殆どその度ごとに会つているので、相沢知吉といふ人物については一通りのことは知つているつもりだつた。同時に相沢の経歴についても聞知していた。
「神尾司令官閣下と同列なんだよ。宇品から東京駅着。それから直ちに参内上奏されたんだよ。どうも、すばらしいね。目に見えるやうだね」
と、練吉はわざとらしく顔をしかめてみせた。
「何でもないぢやないかね、君から聞いたとほりだ。心配することはないと思ふな」
「ねえ、御苦労なこつた」
練吉は房一の腕にさはつて、囁くやうに云つた。近眼鏡の下から切れの長い練吉の眼が一種こつそりした親密な表情をのぞかせていた。突嗟とつさに房一はその囁くやうな調子や眼つきから、練吉が何のことを云つているのかを了解した。
その外から見れば屋根と築地塀だけのやうな家の前で、三人の男が立つてしきりと話していた。
道平はそのまゝ夕食を招よばれて、ゆつくり腰を落ちつけていたが、夜ふけ近い頃になつて、ひよつこり
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