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    「今日は士曜日で、半休だからね」

    そして、少し横手に身をひきながら、しげしげと房一を眺めた。感慨無量、と云つた態ていであつた。

    「うん」

    と、小谷が云つた。

    それは盛子だつた。きりつとした割烹着の姿は彼女の伸びやかな身体の特長をよく現はしていた。

    「何を云うとる。すまじきものは宮仕へ、といふぢやないか」

    これが若し他人だつたら、或ひはかけがへのない一人息子でなかつたら、正文もいさぎよく結着をつけてしまつたらう。「道楽息子」――その一言で済むわけだつた。

    温泉宿へ一旦いったん踏み込んだ以上、客もすぐには帰らない。宿屋の方でも直すぐには帰らないものと認めているから、双方ともに落着いた心持で、そこにおのずから暢のびやかな気分が作られていた。

    「途中から帰つて来たんだよ」

    熱心になっていた「な」の字さんは多少失望したらしい顔をした。

    すると、徳次はびつくりしたやうな眼で房一を見やつた。

    「往診ですか」

    「鬼倉ちふのはきさまかと云ふんだよ。あんまり、この近所の者をいためてもらひますまい」

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